すっかり日中はあたたかくなった都内。いよいよもって春が近い(というかもう春?)というところでしょうか。こういう陽気のときには「春」を感じる曲が聴きたくなります。
古今東西、クラシック音楽に特化しても、春と名のつく曲は沢山ありますね。ヴィヴァルディの春、シューマンの交響曲第1番「春」、ブリテンの春の交響曲、ストラヴィンスキーの春の祭典(春らしいのかアレ?)。
そんな中で、今回ご紹介したいのはドヴォルザークです。ドヴォルザークの交響曲第6番をご紹介します。
偉大なる交響曲作曲家「ドヴォルザーク」
ドヴォルザークと言えば、まぁ皆さんが真っ先に思い浮かべるのは「新世界」ですね。交響曲第9番「新世界より」。2楽章が「家路より」っていう題名で歌になってたり、学校の帰りの放送で流れたり・・・。(リンクはyoutubeに置いてあるぎじんオケの演奏・・・指揮がホントひどいんで申し訳ないのですが、youtubeは著作権的に怪しいものが多いのでちょっとリンクするの躊躇したとか。自分の指揮する演奏ですみません)
ドヴォルザークという人はとにかく「メロディメーカー」と言われておりまして、非常に覚えやすく心地よいメロディがぽんぽんと頭に思い浮かぶ人だったりします。交響曲第9番「新世界より」の第一楽章なんて、よくよく聴いてみると短い時間に本当に沢山のメロディが使われていたりします。昔、N響アワーという番組の中で、作曲家の池辺晋一郎氏がピアノの演奏をまじえてそのあたりを解説していたのを覚えています。ちょっとしたつなぎのメロディも、普通の作曲家だったらそのメロディだけで一曲書けちゃうくらいだ、って。ベートーヴェンが交響曲第5番(運命)の1楽章を「たたたたーん」の積み重ねだけで曲に仕上げたのと、全くアプローチが違うという意味でも、面白いなぁ、と思います。
で、このドヴォルザーク、よく知られた新世界が交響曲第9番ということは、他に8曲も交響曲を作曲しているわけですよ。19世紀で後世まで名前の知られている作曲家って、9曲も書いてる人の方が少ないんです。
- メンデルスゾーン 5曲
- シューマン 4曲
- チャイコフスキー 6曲(マンフレッド交響曲ってのもあるんでそういう意味じゃ7曲か)
- ブラームス 4曲
シューベルトが8曲(昔は9曲って言われたんですけどね、まぁその辺りはいつか機会があったら)なので、ベートーヴェン以降で9曲以上書き上げた作曲家って、ドヴォルザーク、ブルックナー、マーラー、ショスタコーヴィチなど、意外にも多くはないんですね。
そう考えると、ドヴォルザークは十分に「交響曲作曲家」なわけです。にも関わらず、彼の交響曲は「新世界」と8番(副題「イギリス」って言われてた時代もありましたが、これはイギリスで出版したから、というだけなので現在では使われない副題です)くらいがよく知られたものでした。
近年は7番も演奏される機会が多くなり(超絶かっこいい!)ましたが、それでも1番〜6番はほとんど聴かれる事がありません。
「副題がついてないからなんじゃないの?新世界とかイギリス(無くなったけど)が有名になったのは副題があったからじゃないの?」という意見もありそうですが、いやいや、彼の交響曲第1番なんかは「ズロニツェの鐘」という副題がちゃんとありました(作曲家自身が付けた)。
正直、なんでなのかはよくわからないんですよねぇ・・・。もっと聴かれてもいいとは思うのですが・・・まぁチャイコフスキーも1,2,3番があまり聴かれないっていうのもありますし、ローカル色豊かすぎるのは忌避される傾向にあるんですかね(名曲ですので機会ありましたら是非!)。
ドヴォルザークの交響曲第6番は「第1番」でした???
さて、今回紹介する交響曲第6番ですが、実はこの曲、交響曲第1番でした。
え?何言ってるかわからんって?
実はですね、ドヴォルザークの交響曲は、作曲した順番でついている番号(今ついている番号)とは別に、昔番号がついていました。というのは、初期の交響曲って「出版されてなかった」んですよ。で、この第6番がはじめて出版されまして、その時に「交響曲第1番」として出版されたんです。
ちなみに第7番が2番めに出版されたので「交響曲第2番」として出版。第5番が「交響曲第3番」、第8番が「交響曲第4番」、第9番新世界が「交響曲第5番」になりました。初期の交響曲は番号無しで出版されたりして。なので、古いレコードなんかは、新世界を「交響曲第5番」と記しているものもあったりします。
その後、作曲順で番号をつけ直して、現在の番号体系になりました。
なぜこの曲が出版されたのか、という辺りについては詳しくはわからないんですが、当時の著名な指揮者であったハンス・リヒターが作曲を依頼したということですので、出版社もそれに目をつけて「出版しようぜ!」っていう話になったんではないか、と愚行する次第です。
で、この曲なんですが、ドヴォルザークらしく魅力的なメロディに溢れているのは当然として、とにかく「喜びに溢れた」曲なんです。
後年の7番、8番、9番というのは、物悲しさとか暗さ、重さというものが曲全体に流れているんです。それが祖国チェコスロヴァキア(当時はチェコとスロヴァキアは一緒でした・・・っていう解説が必要なくらい分かれてから結構時間たちましたね)への慕情を思わせる、という意味で人気があるのかもしれないんですけれど。
ところがこの6番って、まぁ1楽章から聴いてもらうと分かるんですが、とにかく幸せいっぱいなんです。やってきましたこの瞬間、いやーホント待ってましたよ、いえーい!みたいな。たーのしー(きみは作曲が得意なフレンズなんだね!)!
この開放的な雰囲気は、この作曲家の他のどの曲にもないものだと思っていて、この曲の最大の魅力であります。これが私の中では「春」のイメージピッタリなんです。木々や草花が芽吹くあの瞬間を、1楽章の冒頭だけで感じ取れる気がして、この時期に聴くにはピッタリだと思っています。
気鋭の指揮者 ネゼ=セガンとロンドンフィルによる「決定盤」と呼びたくなる快演
で、たまたま聴いたこの録音が、まさに私のこの交響曲に望む雰囲気とぴったり合致しまして、あまりにもドンピシャすぎてちょっと声だして感動してしまいまして。
まだCDは発売前なんですが、Apple Musicで先行して聴けたのでそちらで堪能。
Dvořák: Othello Overture, Op. 93 – Symphonies Nos. 6 & 7
カテゴリ: クラシック
いやー、実は最初、7番が聴きたくて聴き始めたんですよ。そしたら、序曲「オセロ」が目がさめるような快演で!そのあと始まった交響曲第6番が本当に素晴らしかったんですよ。
ネゼ=セガンという指揮者、いつかまとめて取り上げたい人なんですが、40代の気鋭の指揮者。現在はフィラデルフィア管弦楽団とロッテルダムフィルの音楽監督で、他にもベルリン・フィルをはじめとした世界の主要オーケストラに客演しております。
この指揮者、本当に素晴らしくてですねぇ。「この人じゃないとできない演奏」っていうのをとにかくバンバンしてくれます。ヨーロッパ室内管と録音したシューマンの交響曲、バイエルンと録音したマーラー、オーケストラ・メトロポリタンと録音が進むブルックナーなどなど。
もちろん手兵とのコンビも素晴らしいですよ。あとはオペラの世界でも最近人気が出てきています。
youtubeではPROMSで演奏したプロコフィエフの交響曲第5番が素晴らしい(リンク貼っちゃったw)。
で、このドヴォルザーク、ものすごく完成度高い演奏なのに、とにかく熱いんですよ。聴いてくとこちらの気分も高揚してきます。あぁ春がきた!やってきた!!!
そしたら、曲終わりに拍手が!ええ!?これライブなの!?
お客さんも熱狂です。いや、これ実演で聴けたら幸せだよなぁ・・・いやぁ、本当に素晴らしい・・・。
7番も素晴らしいのですが、私の印象では6番の方がずっと満足度高かったです。いやぁ素晴らしい曲の素晴らしい演奏!非常に少ないこの曲の録音でありますが、新進気鋭の指揮者による現在進行系の演奏で、しかもこの水準!あぁ、素晴らしい、本当に素晴らしい。
ということで、春を待ち望んでいる方は、是非この演奏を聴いて、一足早い春の訪れを予習してみてはいかがでしょうか。
オススメです!
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