昨年、オーボエ奏者としてひっさしぶりにオケ乗ったんですよ。その時に声をかけて下さったオーボエ奏者の方と会話してた中で、面白い話題がありました。「今の若い子たちにとっての、憧れのオーボエ吹きって、一体誰なんだろう?」
アラフォー世代のオーボエ界スーパースターって・・・
アラフォー世代の我々にとっては、オーボエ界のスター奏者というと、だいたい出てくる名前は決まっておりまして。
ローター・コッホ
言わずもがな、カラヤン/ベルリン・フィル時代を象徴するスタープレイヤーの一人(1970年代のベルリン・フィルはちょっと意味わかんないくらいスタープレイヤー揃いだった・・・フルートのゴールウェイ、クラリネットのライスター、ホルンのザイフェルト)。分厚いリードと多少過剰なヴィヴラートの連続にも関わらず、全てが音楽的(起きてる間は、酒飲んでるかオーボエ吹いてるか、って言われるほどだった、と某プロ奏者から伺ったことがあります)。
日本のアマチュア奏者が一時期みんな真似をしたと言われる(実際はどうだったんでしょうね)彼の奏法は、結局彼でなければ実現できないものであったという意味で、貴重。
オーケストラプレイヤーとしても素晴らしいのですが、ソリストとしても本当に素晴らしい存在。代表的な録音としてはやはりシュトラウスのオーボエ協奏曲かな。これはカール・ライスターも自叙伝の中で「ベルリン・フィルで最も印象深い演奏の一つ」として取り上げるほどです。この曲の録音は数多く出ておりますが、未だにこの演奏こそがベストワン、という方も多いのではないでしょうか。
ハインツ・ホリガー
神様。
いやもうこの一言で終了なんですけどね・・・ちなみに現代音楽作曲家としても、指揮者としても、その才能をいかんなく発揮しております(指揮者としてベルリン・フィルの定期公演も指揮してたりします)。というか、まだ現役ですよ・・・すげぇ・・・。
コッホの独特な音色とはまた別で、どうしてもペラペラとした印象の音が、アマチュアのオーボエ奏者には割りと不評だった印象があります(ただし一般の方にとってのオーボエってのはホリガーの音だったようですね・・・)。私も若い頃は全く受け付けなかったのですが、ある時突然好きになりまして、以降は神様として崇めております。
尋常じゃない数の録音を残しているホリガーですが、やっぱり個人的にもっとも衝撃的だったテレマンの無伴奏ですかね。これ一人で吹いてるんですよ・・・ちょっと意味わかんないくらいすごくて、初めて聴いた時は唖然としました。こちらも他の奏者が演奏された録音が結構な数ありますけれど、私にとってはやっぱりホリガーこそが至高!とか思っちゃいます。
宮本文昭
日本を代表するオーボエ奏者。音色の好みとかそういうのはまぁあるでしょうけれど、オーケストラの中のイチ楽器にすぎない(失礼)オーボエという楽器をポピュラーにした立役者ですね。タバコ(ピース)のCMなんかで吹いてる姿は、当時アマチュア奏者は一度は真似したと言われる(え?そんなことない?私は真似しましたよ)。
ケルン放送交響楽団の首席奏者で、このオケが来日して幻想交響曲(ベルティーニ指揮だった)やった時、3楽章のバンダ(舞台裏で吹く)が宮本さんだったとか。宮本さん目当てで行った人が、オケに宮本さんが乗ってないのを残念がってたら、3楽章で舞台裏から聴こえた音がすぐに宮本さんだとわかった瞬間「これはラッキーなものを聴けた!」と思ったとか(出自も怪しい話なのでネタっぽい感じですが、まぁ当時の宮本さん人気を考えるとさもありなん)。
オーボエ奏者としては引退(引退ツアー、行きました!素晴らしかった!)してしまいましたが、サイトウ・キネン・オーケストラの結成当時から首席オーボエ奏者として演奏されていましたし、語り口の上手さからトーク番組なんかにも出られてましたね。引退したあとは指揮者としても活動されており(東京シティフィルの首席になってた時期もありました!)、現在は指揮活動も引退されております。そういえば最近拝見していないなぁ。
代表盤、っていうのはまた難しいのですが、やっぱりこれでしょう、ブルーヴォイス。いま聴いてもいいなぁ、これ。
なんというか、先に挙げた三名の奏者は、今でも素晴らしいよなぁ、と思うわけで、さらにいうともっと紹介したい方がいらっしゃる(個人的にはここでマンフレート・クレメント先生を採り上げたくて仕方ないのですが、スタープレイヤーなのか?と言われるとちょっと厳しいので自重する)んですけどね。
冒頭の話題に戻って、今の若い世代(10〜20代)にとってのオーボエ界のスーパースターって、一体誰なんでしょう。
フランソワ・ルルー
元バイエルン放送響首席奏者(その前はパリ・バスチーユ管弦楽団)にして、レ・ヴァン・フランセの一員。おそらく現代において最高のオーボエ奏者。最近若手を中心にすごい奏者は沢山いるんだけれど、ルルーとはまだ役者が違う感じ。ちょっとすごい。
代表盤、っていうのも難しいけれど、やっぱりシュトラウスの協奏曲かな。かなりいいです(バックのオケも素晴らしい)。