自宅にあったPlayStation4を盛岡に送った今日この頃、皆様いかがおすごしでしょうか。
(据え置きゲーム機は東京の自宅からは無くなりましたが、やろうと思ってたDARK SOUL3とかが自宅にまだ残ってるので、誰かほしい人・・・)
それはさておき、今日は品川にある「原美術館」というところで、現代アートに身を委ねてきました。
原美術館は、現代アートを中心(というかそれしか置いてない)とした展示を行うので有名な美術館。品川という場所柄、私の生活圏に比較的近いので、週末たまーに行くんです。
いまは企画展ではなく、原美術館が持っているコレクションを飾る
「みんな、うちのコレクションです」という展示になっております。
これもとても面白いのですが、今日のメインは実はこっちではなく。
現代音楽のコンサートだったんです。
2016年6月3日[金]、4日[土] 加藤訓子コンサート 「ライヒ~ペルトの世界」 at Hara Museum [原美術館]
たまたま原美術館のページを見たら、このコンサートの事が書いてあって。
速攻で申し込みました!
ここまでガッツリと現代音楽(特に今回はミニマルミュージックだ)中心の、マリンバによるソロリサイタルなんて聴いたことがありません。
ライヒは何度か耳にしたことはあるのですが、ペルトは正直ほとんど聴いたことがなかったので、とてもとても楽しみでした。
で、実際に会場に行って、プログラムをもらいまして。
すごい・・・すごいセットリスト・・・・。
バッハに挟まれたライヒという流れから、後半はペルト一色(ハイウェル・デイヴィスという方は存じ上げませんでしたが)。
企画演奏会で「BtoC」(バッハからコンテンポラリーへ)とかいうのは見たことがありますが、まさにそういう意図なのかも!?
原美術館は17時で閉館になり、コンサートの聴衆だけがホールに通されます。
こじんまりとしたホール。100人入るかどうか、というところですが、大きな全面ガラスで中庭が見える感じも含めて、あまり狭さを感じません。
こういう小さいながらも圧迫感のないホール、いいなぁ。
ホール入り口ではペットボトルの水がおいてあり、自由に飲んでよいことになっていました。
地味に嬉しかったです。演奏会の途中でも水を飲んでよいわけで、下手にキャンディとかで包み紙がガサゴソやるよりずっと健全でした。
(冷房もけっこう効いていたので乾燥する感じも潤せてよかったです)
聴衆が座る椅子は金属のものでしたが、低反発の座布団が敷いてあって、コンサートの最中も特に座り直したりする必要がなかったのも嬉しかったです。
客席はほぼ満席(完売したらしいですが、予備の椅子が後ろにちょっと用意してありました)。
こんなガッツリと現代音楽なコンサートなのに、老若男女という感じ。年配の方が多いことにも驚きました。
(そして演奏中、物音ひとつ立てずにあの空間を楽しまれている姿に、教養の深さを感じました・・・ちょっと難しいんじゃないか、とか勝手に思っていた自分に恥じ入るばかりです)
コンサートが始まる、とスタッフの方から口頭でお話があり、ちょっとすると、ガラス越しに見える中庭を、一人の女性が鈴を鳴らしながら歩いてきます。ゆったりと歩いてきたその方こそが、今日の演者である加藤訓子さんでした。
その歩いている姿からすでにみんな心を奪われて、ホール内の空気が一変したのには驚きました。
オーラを漂わせる加藤さん、私(一番後ろの窓際に座ってた)の脇の扉から入って、すぐ横を通っていきました。
引き締まった身体、そして筋肉。それすらも美しいと思わされまして、それが実に音楽的に歩いていくんです。一歩一歩、鈴を鳴らすのですが、鈴が鳴っていない瞬間ですら、なにか音が聴こえるような、そんな歩き方でした。
用意されたマリンバに向かい、マレットを手にして、バッハのプレリュードが始まった瞬間、その響きの深さに驚きました。背筋からゾクゾクゾクっとしてくるこの感覚、久しぶりに味わいました(盛岡で鈴木秀美さんの無伴奏チェロ組曲を聴いた最初の一音で感じた以来)。
今回のプログラム、実はマリンバ用に作曲された曲はなく、すべてマリンバ用に編曲してあるんです(編曲はもちろん加藤さん)。
そしてこの編曲が実に素晴らしいんだと思います。
というのも、最初からマリンバのために書かれていたんではないか?というくらい完成度が高いんです。バッハもふくめて。
マリンバという楽器は本当にすごいですね。
ライヒのように音の粒がはっきりとしていることでリズムや音形、強弱を楽しめるというものもあれば、ペルトのように音の粒を見せないように(トレモロで)演奏しながら空気を塗りつぶしていくような曲も演奏できるわけで。
ライヒは「ニューヨーク・カウンターポイント」という曲が本当に素晴らしかった!多重録音により事前に吹き込まれている自身のマリンバ演奏に、実演で入り込んでいくというのも面白いのですが、叩いているのか録音が鳴っているのかがわからなくなる瞬間を何度も何度もみせてくれるだけでなく、実演での自身の演奏が本当に楽しそうで、全身を使って、マレットのフォロースルーですらライヒの音楽になっているとでも言いましょうか、もうあの空間そのものが「音楽」でした。
あぁこれぞ現代音楽!!!!!難しいことを考えず、ただただ起きている事象に身を委ねる!!!!
目をつむると、ニューヨークの情景が目に浮かぶようなリズム。都会の喧騒とジャズのリズムが同時に耳に入ってくるかのような、本当に不思議でワクワクする時間でした。
しかし圧巻はペルトでした。
ペルトは先に書いたように、細かいトレモロにより、会場の空気をマリンバの音の響きで飽和させていきます。色、温度、濃度・・・音だけでなく、空気を感じさせる・・・ちょっと今までに感じたことのない感覚でした。
いや、聴きながら実は涙が流れてきまして・・・感動していることに後から気づく(あれおれなんで泣いてんの?みたいな)のは、ちょっと経験ないです。
ライヒはバッハに挟まれてますが、ペルトはハイウェル・デイヴィスの曲が間に入っただけでした。
ただこのハイウェル・デイヴィスさんの曲は、ペルトの「響きで空気を塗りつぶす」の部分のみ特化したような曲で、ますますライヒとペルトの対比を際立たせることになりました。
それにしても、間にでてきたバッハに違和感を感じないのは、双方のいいとこ取りになっていることに気付かされたからなんですが、そもそもそれぞれの要素をバッハの楽曲が持っていて、そこから派生してミニマルミュージックがあり(すごく乱暴に言うと対位法的な発想ですよね)、さらにライヒの方向やペルトの方向に派生していくわけで。
やはりバッハは偉大なり。
アンコールでは「まだ未公開の編曲」ということでペルトの可愛らしい曲を演奏してくださいました。原曲はピアノのようですが、マリンバならではの音色が実にマッチしており、心がホッコリする曲でした。
あともう一曲。おそらくバッハだったと思いますが、これまた凄かったなぁ。
実はバッハの演奏ではマリンバでビブラートも使っています。
ビブラートのやり方は、一度叩いた鍵盤にマレットで柔らかく何度もタッチするんです。
これを曲弾きながらやるんですよ!すごい技術!!!!!
それが全く違和感なく聴こえてるわけで、ただただ驚嘆しました・・・。
ただただお腹いっぱいになって帰ってきましたよ。
素晴らしかった・・・現代アート一色に染まった、そんな日。
聴き終えて美術館出てからなんか仕事の変なメール(失礼)がきていることに気づきましたが今日は見なかったことにします(ヲイ)。
それにしても。
一音一音を研ぎ澄ませたような、すごい演奏でした。全部暗譜ってのも凄いのです。
一応趣味でオーボエ吹いてますけれど、真の芸術家の姿を見てしまい、自分を恥じ入るばかりです。もっと貪欲に音への執着が必要なのかもしれません。
これまでにない深い感動を覚えつつ、祭囃子の聴こえる北品川駅で京急を待ちながら余韻に浸りつつそんなことを考える自分なのでした。
Posted from するぷろ for iOS.
コメント