最近このブログでは、Sakana AIだのSoftBankだの、AI関連の話ばかり書いている私ですが──
今日はもっと“現場寄り”の話をしてみようと思います。
テーマは AIのセキュリティ。
ChatGPTやGeminiを触っていると、
「なんで会社では使っちゃダメなの?」
「なんで資料を貼ろうとすると警告が出るの?」
「なんで“AI禁止”ってルールが生まれるの?」
という“AI導入の壁”に出会うことがあります。
私自身、日々の仕事でAIをどう活かすかを考えたり、
業務改善の一環としてAIツールを調べたりしていますが、
ぶつかる壁はいつも“セキュリティ” なんですよね。
今回は、このややこしいテーマを
できるだけライトに、現場サラリーマン目線で整理する 記事です。
■ 1. まず根本:「AIのセキュリティって何が問題なの?」
AIのセキュリティといっても、モヤっとしてますよね。
一番シンプルに言うと、
「AIに投げた情報が、どこに行ってるか分からない問題」
これに尽きます。
ChatGPTやGeminiなどのクラウドAIは“外のサーバーで動く”仕組みなので、資料を貼るという行為は、
- 社外に情報を送る
- どこの国に保存されるか分からない
- AIモデルの学習に使われてしまう可能性を疑う不安
- ベンダー側の仕組みがブラックボックス気味
といった懸念をどうしても抱えます。
※実際には、ChatGPT EnterpriseやGemini for Workspaceは「学習には使わない」と規定していますが、
現場の心理的ハードルとして“学習されるのでは?”という不安は依然として大きい。
企業のセキュリティ担当から見れば、
「いやいや、そんな簡単に社外にデータ投げられては困ります!」
となるのは、ある意味当然なんですよね。
■ 2. 企業がAIを怖がる“3つのリアルな理由”
「セキュリティ」と一言でまとめがちですが、企業視点ではこの3点が特に重いです。
① データ流出・誤送信リスク
- 機密資料を誤って貼る
- 個人情報を含む文書を投げてしまう
- 削除依頼をしても「絶対安全」とは言い切れない
人間はミスをします。
だからこそ「うっかり貼ったらアウト」な構造が恐れられるわけです。
② AIが“もっともらしい嘘”をつくリスク
AIの誤回答(ハルシネーション)は避けられません。
- それっぽい文章
- それっぽい引用
- それっぽい理由づけ
これが業務手順書や報告書に混ざったら事故につながります。
③ ベンダー側のリスク(障害・不正アクセス)
生成AIは巨大クラウドで動いていますが、「100%安全」はありえない。
- 大規模障害
- APIエラー
- 外部からの攻撃
これらは利用者側でコントロールできないため、
「クラウドAIは怖い」という感覚にもつながります。
■ 3. じゃあ、どうやったら“安全にAIを使えるのか”
これ、整理すると意外とシンプルで 3つしかありません。
① “AIに渡していい情報だけ使う”ルールを決める
いわゆる ホワイトリスト方式。
- お客様情報 → NG
- 社内限定ドキュメント → NG
- 公開情報 → OK
- 自分の思考メモ(業務情報なし) → OK
「何を入れてよいか」を明確にすると、運用はかなり安定します。
② ローカル or 社内AI の活用
これは近年、企業の間で急速に進んでいます。
例:
- Ollama
- LM Studio
- SoftBank Sarashina mini
- 富士通 Fugaku-LLM(軽量版)
これらは “データが社外に出ない構成を取れるAI” です。
▼ 少し正確に補足
Sarashina mini や Fugaku-LLM(軽量版)は
オンプレミス や 閉域ネットワーク内のクラウド で稼働させることができるため、
「外部クラウドにデータが出ない構成を取りやすい」
という強みがあります。
「ローカルPCで動く」というよりは、
“自社の私道 → 鍵のかかった倉庫(自社サーバー)に入れる” イメージです。
ChatGPT/Geminiのように海外リージョンへ送る構造とは、この点が大きく異なります。
③ AIの出力を“人間が必ずチェックする”
そして、結局これが一番大事。
- 最終判断は人間
- 重要な数値は複数チェック
- 文書生成は校正前提
つまり、
AIは“補助輪”にする。
これだけで、セキュリティはかなり担保できます。
■ 4. クラウドAI vs ローカルAI:どっちがいいの?
よく聞かれますが、結論はシンプル。
両方使うのが一番強い。
■ クラウドAIが強い領域
- マルチモーダル(画像・音声・動画)
- 最新モデル(OpenAI, Google, Anthropic など)
- 英語中心の業務
- 発想・要約・文章生成の全般
最新機能の恩恵はやっぱりクラウドが圧倒的。
■ ローカルAIが強い領域
- 機密文書の処理
- 社内のナレッジを扱う仕事
- ログ・大量テキストの解析
- RAG(検索+推論)
- 社内システムとの連携
“守り” と “現場密着” の強さはローカルAI。
■ 5. 最後に:AIを使わないことが、すでに“リスク”になりつつある
企業がAIを怖がる気持ちはすごく理解できます。
「業務情報が外に出るリスク」は確かにあります。
ただ──
AIを使わないことで発生する“機会損失”も、すでにかなり大きいです。
- 文書作成
- 仕様整理
- 問い合わせ対応
- ナレッジ共有
- 情報検索
- トラブル調査
- アイデア出し
ここらへんは、AIが本当に得意な領域。
「危険だからAI禁止」 のまま止まる企業と、
「どう安全に使うかを決めて導入する」 企業。
両者の差は、これからますます広がるでしょう。
いや、正直もう広がっています……残念ながら。

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