大好きなピアノ協奏曲:ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番

Music

最近iPhoneの話ばっかりだったんで、久しぶりに音楽の話を。

職場の同僚がいまちょっとピアノにハマっている(弾く方)らしく、その流れで最近自分もピアノ曲を聴くことが多くなっています。

ピアノ協奏曲、っていう意味では、チャイコフスキーもシューマンもグリーグもショスタコーヴィチもプロコフィエフもブラームスも大好き。でもピアノの独奏曲となると、実はショパンがちょっと苦手な私(聴くのも弾くのも)。独奏曲に関してはベートーヴェンやモーツァルトを聴くことが多く、他にはグールドのバッハが多いですね。あと、何故かラフマニノフ。あ、もちろんこの人達の協奏曲も好きなんですけどね。

一応保育園の頃からピアノを習ってて、10年くらいはやってたのですけれど、練習嫌いな少年だった私は、もうまったく練習しないでレッスンに行くような悪い生徒だったもんで、ほとんど上達しなかったんです。でもピアノの音は好きで、レッスン行くのも嫌いじゃなかったし、音が鳴らせているだけでとても楽しかったのを覚えています。

今でも盛岡の自宅に帰れば、ちょっと弾いてみるのですけれど、指がほとんど動かないし、昔バリバリ弾けた曲も、もうグッチャグチャで、隣にいる息子に「パパへたすぎー!」と笑われる始末でございます。今じゃ息子のほうがバリバリ弾けるんじゃねーの?

まぁそれはさておき、シリーズというほどじゃないですが、たまーに、自分が大好きなピアノ協奏曲を紹介していこうかな、と思います。メジャーどころもあれば、マイナーなところもあって、まぁ愛好家の方ばかりがこのページを見ているわけじゃないので、その辺のチョイスは玄人な方々には物足りないかもしれませんが、まぁ流してくださいませ。

そんなわけで、今回取り上げたいのは、ベートーヴェン作曲 ピアノ協奏曲第4番。

ベートーヴェンはその生涯に5曲のピアノ独奏のための協奏曲を残しています。まぁヴァイオリン協奏曲を自身でピアノ用に編曲したものもありますので、厳密には6曲あるといってもいいのですけどね。番号付きは5曲なので、5曲としておきます。ちなみに1番と2番は作られた順番ではなく、出版された順番なので、実際には2番の方が先に作られています。以降は番号通りの順序で作曲されています。そんなわけで、この4番は、ベートーヴェンによる4曲目のピアノ協奏曲となります。

ベートーヴェンのピアノ協奏曲というと、最も有名なのは「5番」ですね。皇帝というタイトルまでついているこの曲は、もう華やかで、オーケストラも雄弁で、皇帝の名にふさわしいゴージャスな曲。あとは3番なんかも有名ですね。5曲の協奏曲の中で唯一の短調(マイナーコード)な曲である3番、それもハ短調っていう調整はあの交響曲第5番(運命、っていう俗称で呼ばれてたりしますね)と同じ調性で、とても力強く、いわゆる「ベートーヴェンらしさ」というものが溢れている、これまた名曲であります。

その名曲に挟まれた4番という協奏曲ですが、これはもう玄人好みの曲といってもいいかもしれませんね。どうしてもベートーヴェンというと「重厚で荒々しい」響きというのを思い浮かべてしまうのですが、この4番の協奏曲はそうした既成概念を覆すような、そんな「美しい」曲なのです。

まず冒頭、いきなりピアノの独奏から始まります。これ、多分過去に例のない事だったんじゃないか、と思います。それまでの協奏曲は、まず伴奏のオーケストラによって最初のテーマなどが演奏され、お膳立てが出来た段階で独奏楽器が入ってくる、というのが通例でした。ところがこの4番のピアノ協奏曲は、冒頭からいきなりピアノが弾きだすんです。これ、当時聴いていた人はびっくりしたでしょうねぇ。冒頭の和音が奏でられた瞬間から、そういう曲だとわかっている私でも、ついつい居住まいを正してしまいます。聴くことに集中しよう、という気になっちゃいます。

ベートーヴェンというと、トランペットの輝かしいファンファーレのような響き、ティンパニによる荒々しいリズム、という印象がどうしてもあるんですけれど、この4番の協奏曲、実は1楽章と2楽章にティンパニとトランペットは出てきません。音響的な充実というよりも、音楽的な充実を狙っている、とでもいいましょうか。1楽章や2楽章が、その制約のためにとてもとても美しく、もう本当に幸せな時間を過ごせます。逆に、一歩間違えると抑揚のない退屈な音楽が流れてしまうことにもなりかねず、演奏そのものはホントに難しいです・・・はい・・・。

2楽章は1楽章の幸せな響きとは打って変わって、厳しい表情を見せる曲です。弦楽器は(強弱こそあれ)基本的に同じリズムを繰り返します。なんか大声で「反省しろ!反省しろ!!!」と断罪されてるような気分になりますが、それをピアノが癒してくれます。もうホントにピアノが好きになっちゃいますね(なんか違う)。

3楽章は舞曲ですので、おまたせしました的にトランペットやティンパニさんが大活躍です。リズムをバシバシ決めながら、楽しく曲が進んでいきます。あ、そうそう、この協奏曲、冒頭ピアノの音で始まりましたけれど、終わりもピアノは一緒に終わります。「え?ピアノ協奏曲ってピアノも一緒に終わるの普通じゃないの?」と思われるかもしれませんが、実はオーケストラとピアノが同時に終わる曲って、この当時はそんなに多くないんです。なので、ピアノが先に終わっちゃって、オケの最後の音まで独奏者が待ってる、っていうシーンは割りと珍しくないんですよ。この曲はそういう意味では初めてオケとピアノが同時に終われる曲、なんですね。だから一緒に終われると結構気持ちいいです(演奏者視点)。

ということで、実際の曲の動画をここに貼るわけですが、Youtubeに上がってるやつ、著作権的に微妙なものが多いので、紹介するの躊躇しちゃうんだよな・・・・。
なので、悩んだ挙句、自分が指揮したものを載せる事にしましたw

ピアノもオケも頑張ってもらいました!これ聞いて「つまんないなー」って思うとしたら、それは指揮者である私の責任でございますので、その時はどうぞこのあと紹介するCDとか買ってください(笑)。

さて、オススメのCD。

エマール独奏 アーノンクール指揮ヨーロッパ室内管弦楽団(リンクはピアノ協奏曲全集)

エマールというピアニストはバリバリのゲンダイオンガク弾き、っていう印象を持っていましたが、この演奏はとても素晴らしくて、私がいま一番聴いてるベートーヴェンのピアノ協奏曲です。アーノンクールの指揮がちょっとやり過ぎじゃね?と思う部分が他の番号の曲ではありますけど、4番に関しては問題無いです。これ本当に素敵な演奏なので、数多くの方に聴いて欲しいなー。

もう一枚は、古楽器。それもちょっと特殊なやつです。
Arthur Schoonderwoerd独奏(フォルテピアノ) Ensemble Cristofori

輸入盤ですけど、国内盤も出てたはず。ってかこの方なんてお読みするんでしたっけ?以前どこかで紹介した気もするのですが・・・。
この演奏が何故特殊か、といいますと、編成が特殊。ベートーヴェンによる「ロプコヴィツ邸での試演」(初演じゃないですよ)を行った時の編成による演奏なのです。弦楽合奏7人、管楽器は完全2管編成というもの。ほぼ室内楽といっていいですねこれ。
冒頭のピアノが分散和音で始まった瞬間、私の心は完全に掴まれてしまいました。ピアノフォルテ(時代楽器、というやつです)の響きといい、ヴィヴラートが抑えられてとても小さい編成による弦楽器の刻みや和声の作り方など、この曲の新しい魅力が再発見できたような、とても嬉しい気持ちになりました。
古楽器による演奏なのでピッチが低めであるとか、カデンツァがベートーヴェン自身によるものではないとかまぁいろいろあるので、万人にオススメするのはちょっとはばかられるのですけれど、この曲を愛して止まない、という方なら一聴の価値はあります。
ちなみにベートーヴェンの協奏曲は(ヴァイオリン協奏曲の編曲版も含めて)全曲録音されて発売されています。もちろん私は全曲買いましたw

ちょうど季節も秋になってまいりましたし、秋分の日ということでこれから夜も長くなって参ります。どうぞ秋の夜長を、この素敵な協奏曲でゆったりお楽しみくださいませ。

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