長文ご容赦。
いや、ほんとに人生でこんなに「噛みしめる」という行為を意識したのは初めてかもしれない。
左右下の埋没していた親知らずを、全身麻酔で取ってきました。
そもそもの発端
ずっと気になってはいたんですよ。
高校生だった時、上の親不知は二つとも取ってるんです。
下二つは「まぁまだいいでしょう」っていうことで放置してたわけです。
あれから、何度か歯医者に行って、行くたびに歯科医師に「あー、下二つ、親不知残ってますねー」と言われるんですよ。
でもまぁ顔を出してるわけでもないし、痛みがあるわけでもないので、ずっと放置してたわけです。
存在すら忘れていた今年。夏のある日、突然の激痛が・・・。
左下の奥歯の「奥」の歯茎が腫れて、間断なく痛みの波が!50歳を超えてまさか痛みで泣く日が来るとは・・・・。
で、かかりつけの歯科医に行ったら・・・「あー、親不知が押してますね・・・多分原因はこれですね・・・」と。
「ついに・・・Xデーがきた、ということですね」(なんだよそれ)
口腔外科での診察・・・
そんなわけで口腔外科に紹介状を書いてもらって、改めて診察をお願いしたんですよ。
地元の大きい病院に行き(お見舞いとかでしか来たことない)、紹介状を出して、いよいよ診察・・・。
左:痛みの原因、真横に生えた親知らず
まず左下。
親知らずが真横に生えていて、奥歯を横から押していた。
それで何度も激痛に襲われてきたので、もともとは「左だけ局所麻酔で抜こう」という話だったんです。
でもレントゲンを見た先生のひと言で、状況が変わりました。
「右下の方がヤバいです。放っておくと、将来的に取れなくなるかもしれません」
右の親知らずは斜め下方向に生えており、しかも顎の骨の中。
痛みは出ていないけど、これが将来暴れ出したら、もう鎮痛剤でごまかすしかないとのこと。
右:顎の骨の中に潜む“爆弾”
右下の親知らずは、いわば“埋蔵型”。
顎の骨の中で斜めに成長し、しかも神経に接している。
年齢を重ねて骨が固くなれば、もう取れなくなる。
つまり、「今やらなければ一生できない手術」。
局所麻酔では不可能。
「左だけ局所麻酔で抜くか、両方を全身麻酔で抜くか」の二択。
そして私は全身麻酔を選びました。
全身麻酔の現実
先生が言いました。
「いやー、その方がいいですね。左も神経ギリギリなので局所だと厳しいかもしれません」
……先に言え(笑)。
とはいえ、両方とも神経に触れている位置なので、
下唇の感覚が鈍くなる(最悪は消える)リスクもありました。
「オーボエ吹けなくなるかもな」とぼんやり思いましたが・・・。
でもさすがに「あの痛みとはもう出会いたくない・・・」
ということで、全身麻酔での2本同時抜歯、という選択をとりました。
当然のことながら全身麻酔ですから「入院」が必要。
2泊3日の予定で、入院〜全身麻酔〜手術、ということに決まりました。
入院〜そして全身麻酔へ
事前検査を行なってから数日後、2週間が経ち、いよいよ入院。
実は入院初めてだったんですよ。なんか家族といっしょに病室にいって・・・着替えて・・・みたいなのを想像してましたが、事前の説明では「コロナ禍以降、通常の面会でしか外部の人とは・・・」みたいな感じでして、結局1人でずっと病室にいた感じ(妻は自宅で電話待機でした)。
別に内臓疾患ということでもないので、ほぼ制限が無い感じ。
全身麻酔ということで夜9:00以降は固形物は食べられなくなる(水分は翌朝7:00まではとって良い)んで、おやつとかも買い込んでおいて、バクバク食べたりしてました。
一応病室ではパジャマ姿になる必要があったので、今回は持ち込みで。
それにしても病室のベッド(パラマウント製)、とても寝やすかった・・・電動で角度をつけられるベッド、すごく快適・・・頭の位置を高くすることで、術後とかもすごく楽だったなぁ・・・。
そんなわけで、夜9:00消灯(早い)。全く眠れず(6人部屋ということもあって、他の方が夜中にナースコールとか咳き込んだりとかもあるのでなかなかの緊張感が・・・)。
翌朝6:00起き(はやい)で、手術着に着替えたり、点滴を入れたり。全身麻酔対策で、足に加圧ソックスみたいなのを履いたりして準備を整えます。
そしていよいよ手術室へ(徒歩でしたけど)。
手術室でベッドに横になると、麻酔科医から「昨日は眠れました?」と。
いやまったく眠れませんでした、と答えると「じゃあこのあとぐっすり眠りましょうね」と。
それにしても全くと言っていいほど緊張感も無く、なんか本当にこのまま手術するのか???と思うくらいに、平常心だったんですよねぇ。
「じゃあそろそろ眠くなる処置しますよ」みたいなことを言われて、いよいよ全身麻酔。
「眠くなる薬を入れますねー。どれだけ耐えようとしても耐えられなくなりますよー」みたいなことを言われて、悠長に「はーい」とか答えているうちに、なんか全身の血流の温度が下がるみたいな、体温がぐっと下がるみたいな、不思議な感覚!
「こわっ!?」
多分それが自分の覚えてる最後の記憶ですね・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・。
・・・さ・・・・・ん・・・・。
・・・さ・・う・・・・・・・。
・・・さ・と・・・さ・・・・。
・・・さとうさーん・・・終わりましたよー・・・・・
ということで、気づいたら全てが終わってました。はい。
術後4時間の「地獄タイム」
手術自体は無事に終了。
ただ、本当の試練はその後でした。
全身麻酔が切れ始めると、痛みと倦怠感が一気に押し寄せる。
4時間は絶対安静で、飲み物も禁止(誤嚥のリスク)。
喉は気管挿管の影響でヒリヒリ、声も出ない。
しかも麻酔の影響で薬も飲めない。
ただひたすら、ベッドで時間が過ぎるのを待つしかない。
五十肩のせいで姿勢もつらいし、麻酔の残りで意識は朦朧。
「坐薬、お願いすればよかったか…?」と後悔したのを覚えています。
とにかくこの4時間が本当に本当に辛かったですね・・・。
拉致監禁されてずっと閉じ込められてる人の感覚、ちょっとだけ味わったような気がする・・・。
マジでトラウマになりかけます。人生でもっとも長い4時間だったのでは?
その後の痛みとか腫れとか以上に、私はもうこの4時間のことを思うだけで「全身麻酔もういや!」と言ってしまうレベルでした。
「動ける」って、それだけで最高
4時間の地獄が終わると、水が飲めるようになりました。
これだけで感動レベル。
トイレに行ける、喋れなくても意思表示できる、
その自由がどれだけありがたいかを痛感しました。
口は腫れ、左は痛み、右は鈍い重さ。
でも「動ける」って、ほんとに最高。
その瞬間、人生のハードモードがノーマルモードに戻った気がしました。
ただ、4時間くらいでは完全覚醒には程遠い感じで、ちょっと目を閉じるとすぐに感覚がなくなってしまうような、ぼーっとしちゃう感じ。
しかも歩くと割と普通にフラフラしてる(それに実は気付かず、歩いていながら自分の思っているのと違う方向に曲がっていくような感覚)んですよ。
その怖さって、実はベッドに戻ってきてから我に返るような感じで思い出すわけです。
よく戻ってこれたな、自分・・・みたいな。
それでも、一つ言えることは「ロキソニン最強」。
いやマジであいつすげーよ。
手術翌日と、その後
翌朝、鏡を見ると顔がパンパン。
右の骨をかなり削ったらしく、腫れ方がえげつない。
でも不思議なことに、左の方が痛い。
(もともと痛みの発端が左だったから、神経が敏感なんでしょうね)
繰り返しますが、ロキソニンは神。
効いてる間は平和。
切れると地獄。
でも「全身麻酔後の4時間」に比べたら全然マシです。
そして退院へ・・・
翌朝から食事もOKとなりましたが、まだ固形物NG。
でも腹は減らない。点滴のせいか、妙に穏やかな空腹。
いろいろ書いてますが、それでも周りの病室の音や会話を聞きながら、
自分の痛みがまだ軽い方なんだと思えて、なんか申し訳ない気持ちにもなりました。
外来で術後の状態を確認。
かなり大きかったというのと、やはり右は「取ったらもう神経が見えてた」というくらいだったらしいので、先生も下唇に麻痺が出てるのでは?と心配されてましたが、全く問題ありませんでした。いやーありがたかった・・・オーボエ吹けそう。
ということで「じゃ、退院ね」ということになりまして、手術の翌日には無事に退院となりました。
退院後の注意
退院してからちょうど今日で1週間経つわけですが、まぁ普通に痛かったですし、食事は結構困りました。まぁ困ったのは妻なわけですが。何を食べさせたら・・・という意味で。
で、同じような方がいるかもしれないので、ちょっといくつか注意というか解説を。
- 全身麻酔での手術の場合は抜歯後に穴が開かない
- 顔を出してるような親不知の場合は、抜いた後が穴になり、そこに血餅ができる(その血餅が傷を治す)のですが、全身麻酔の場合は「縫合」されます。
しかも縫合の際に中に溶けるガーゼのようなものを詰めて縫合されます。これは止血のためにガーゼを噛む、ということができないためです。
- 顔を出してるような親不知の場合は、抜いた後が穴になり、そこに血餅ができる(その血餅が傷を治す)のですが、全身麻酔の場合は「縫合」されます。
- 術後は傷の痛みよりも「顎関節」が痛い
- 覚醒しながらの手術と違って、全身麻酔なので、口を開いた施術でも本人の意思とは無関係で口を大きく開かされてる感じ。そのため、かなり大きく開いた状態になっていると思われるため、かなり顎関節に負担がかかっていると思われます。
この痛み、普通に5日くらいは続きます。
- 覚醒しながらの手術と違って、全身麻酔なので、口を開いた施術でも本人の意思とは無関係で口を大きく開かされてる感じ。そのため、かなり大きく開いた状態になっていると思われるため、かなり顎関節に負担がかかっていると思われます。
- 噛み合わせが悪い
- これは骨を削っているためにどうしても腫れがひどいので、頬の内側とか歯茎も腫れて、噛んだ時の感じが全然噛み合わない感覚があります。これのせいで、術中にプレッシャーがかかっていることも手伝って、関係ない歯も痛くなります。これも5日くらいは割と苦しみます。
- ロキソニンは我慢せずに飲む
- 胃に負担もかかるのですが、出してもらえるならいっぱい出してもらってください。痛くなってから飲むより、痛くなりそうな時には飲んだ方がいいです。もちろん飲む間隔には注意が必要ですが、飲まない選択肢は個人的には「無い」かなぁ、という感じです。
- ストローでの飲料、吸うゼリー系はやめたほうがよい
- 私のように両方の歯を取ると、噛めないために、どうしても流動食のような食事になります。その時に飲料をストローで吸ったり、吸うゼリー系の栄養食品みたいなものを摂りたくなりますが、口中の圧力が強まることで、傷口が開いたり、血餅のようなものが取れたりして、さらなる痛みにつながります。
この話を妻が調べてくれていたので、私は結局そういうものは摂らず、とにかく前歯で極力細かく刻んで飲み込むというやり方の食事をしていました。
- 私のように両方の歯を取ると、噛めないために、どうしても流動食のような食事になります。その時に飲料をストローで吸ったり、吸うゼリー系の栄養食品みたいなものを摂りたくなりますが、口中の圧力が強まることで、傷口が開いたり、血餅のようなものが取れたりして、さらなる痛みにつながります。
おわりに
もし親知らずを「まだ痛くないからいいか」と放置している人がいたら、
ぜひ検査だけでも行ってほしいです。
特に埋没型。
あれは“静かに潜伏している爆弾”です。
私の場合、
- 左は真横に生えて奥歯を押していた
- 右は骨の中に埋まっていた
というダブルコンボ。
全身麻酔は怖いけれど、
終わってみれば「抜いてよかった」と心から思っています。
……ただし、もう二度とやりたくない(笑)。
ま、もうやりたくても出来ないのですが(これで全部無くなったー!)。
追記
あれから1週間。
昨日抜糸も終わって、ようやく普通に喋れるようになりました(抜糸おわるまではフガフガ言っちゃう)。
傷口も塞がってるのですが、まだ腫れが残っているのは、骨を削ってる以上しょうがないことではあります。
まだ口を開くのは結構大変だったりするので、食事はゆったり食べる感じになりますが、そのおかげですげー痩せました(今までどーなってたんだよ)。
入院時は70kgだった体重が、昨日時点で66kgでした・・・4kgも痩せてる・・・どんだけ間食とか多かったんだろうなー(苦笑)。
いずれにしても、50歳である私は、多分今回の手術は結構「ギリギリの年齢」だったっぽいんですよね。骨がどんどん硬くなるので、削るのがたいへん&削ったあとの回復に時間がかかり、場合によっては脆くなって折れる、とかね。
まだ親不知が埋没してて、取るの怖いなー、という皆様、とにかく早めに対処された方がいいです!治りも若い方が早く治りますし!
・・・あ、ちなみにざっくりですが入院費込みで85,000円程度かかりました・・・ふぅ。
教訓:小熊と親知らずは、早めに対処したほうがいい。

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