スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ氏を偲ぶ

Music

既にNHK交響楽団のニュースや読売日本交響楽団のニュースにも記載がありますが、指揮者のスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ氏が亡くなりました。享年93。

氏の演奏を初めて耳にしたのは、NHK交響楽団との共演のテレビ放映でした。曲目はシューマンの交響曲第4番。このときの演奏はCD化もされています。

 

このときの演奏はとてもキビキビしている印象で、N響が急にマッシブなオケになったような、そんな感じを受けて「こ、このおじいちゃん凄いんじゃね???」と思ったのでした。

 

そのすぐあと、年末の第九を指揮されたんですよ。これがまた尋常じゃない演奏で、合唱とか歌とかよりもオーケストラの雄弁さにただただ感銘を受けたのを覚えています。

で、しばらくあとになって、自分のCD棚を見たら、そこにブルックナーの交響曲のCDがありまして。あぁ、ザールブリュッケン放送響だったから買っといたんだった、と思ったそれは、なんとスクロヴァチェフスキ氏が指揮していたことにあとで気付く、という(苦笑)。

ちょーっと言い訳をさせてもらうと。実はチョン・ミョンフンが若い頃にこのオーケストラのシェフだった時代があるんですよ。そこで録音していたショスタコーヴィチの交響曲第6番や、リムスキー=コルサコフの「見えざる街キーテジ」が素晴らしい録音(そしてオーボエが超絶上手い!)だったもんで、このオケの録音を見つけたときに買っておいたんですよ。
スクロヴァチェフスキ氏が指揮したブルックナー、当時はARTE NOVAという安いレーベルで出ていたもので、一枚1,000円だったんですよね。前から書いてるようにブルックナーあんまり好きじゃなかったんだけど、オケの名前で買ってたら、実は、みたいな(苦笑)。

おっと話がずれそうなので戻して。

いずれにしても、NHK交響楽団との共演がとても好きでした。ベートーヴェンの交響曲をまとめて取り上げたときのものは、今でも(盛岡に置いてきてはありますが)BSで放送されたものをDVDに録画して何度も何度も見ました。意外にもこのツィクルスのときに取り上げたヴァイオリン協奏曲のソリストはコパチンスカヤだったんですよ。当時からかなりアグレッシブな印象だったコパチンスカヤをソリストとして選んでいることに、正直かなり驚いたのを覚えています。

そんなわけで、ここからは氏を偲んで、個人的な推し盤を紹介していきたいと思います。

 

ミスターSのショスタコ5番 〜ミネアポリス管弦楽団から読売日本交響楽団まで〜

ミネアポリス交響楽団との演奏

意外、というと失礼かもしれませんが、スクロヴァチェフスキはミネソタ管弦楽団(当時はミネアポリス管弦楽団)のシェフとして1960〜1979年まで君臨しておりました。私はこの頃の演奏、結構好きだったりします。

 

 実はドラティのガイーヌ目的で買ったやつでして(失礼)、このショスタコーヴィチは一回流して聴いてそのままにしてました(苦笑)。氏の名前を認識してから再度聴き直したときに、なんで流して聴いてたんだろう?と思うほどに個性的というか、ちょっと想像してたものと違う(とはいえスクロヴァチェフスキならたしかにこうやるよね、という演奏ではある)ことに困惑したのを覚えています。
この演奏って、オーケストラピースとしてマッシブに練り上げた演奏で、もうキビキビ演奏されるんですよ。冒頭から「???」って。ただ情感とかそういうのはあんまりなくて、とにかく「鍛え上げられた抜き身の刀」みたいなそんな演奏なんですよ。ドライ。ひたすらドライ!
スコア片手に聴いたら面白いと思いますが、この曲が好き、っていう人にとってはいろんな意味で裏切られる演奏なので、覚悟して聴いたほうがいいと思います。
それにしても若い頃からこういう演奏をやってたんだなー、って思うと、ちょっと感慨深いものがありますね。

 

ハレ管弦楽団との演奏

ミネアポリス管弦楽団のあと、イギリスのハレ管弦楽団のシェフとなったスクロヴァチェフスキ。なんとここでもショスタコーヴィチの交響曲第5番を録音しています。たーだーし、録音そのものはこのシェフだった時期ではなく、1990年だったりするので、ちょっと変遷、っては言いにくいのですが・・・まぁ古巣だったし、ということであえてこの場面でとりあげときます。

 

やはり年齢を重ねたせいか、ドライさは随分影を潜めて、瑞々しさすら感じます。オケの精度はこのオケらしく大味で(バルビローリの時代からそう言われてますけれど、スクロヴァチェフ時代のブラームス全集を聴いたときにもやっぱり精度という意味では大味だったんですよね・・・今もそうなのか、と思っちゃいましたが、それは悪い意味ではないです。このオケの味ですから、これは)。
とはいえ、演奏解釈という点では結構やりたい放題で、ケレン味たっぷりのオケバランスや大胆なテンポ変化(4楽章とか「は?」っていう場面が何回か出てきますw)なんかを駆使して、この曲のアンバランスさを表現しているあたりは、この指揮者のこの曲に対するアプローチの変遷を見れて面白いです。ミネアポリスとの録音より私は好きです。こういうアプローチをしている演奏を聴いたことがないので、すごく楽しめますよ。

 

読売日本交響楽団との演奏

そして最晩年(こう書かなくてはいけないのが残念ではあります)のパートナーである読売日本交響楽団ともこの曲を録音しました。

まずオーケストラが上手いです。すさまじく上手いです。というか、オケが指揮者をリスペクトしているのがよくわかる演奏で、1楽章から実に感動的です。あのドライな演奏をしていたスクロヴァチェフスキが、こういう演奏をするようになるとは・・・と感慨深いものを持ちながら聴いていると、終楽章で「ふぁっ!?」ってなりますw あんまり書くとネタバレになるのですが、まぁ楽しめると思いますよw いやぁ、こっちの演奏も凄いわ(というかこっちの方が凄いわw)。
それにしても、年齢を重ねる事で丸くなっていくのか、と思ったら、新たなオーケストラ演奏の可能性を模索していった結果なんだと思うんですよ、コレ。自身が作曲家であったこともあると思いますが、オーケストラの響きや扱いを本当に考えてたんだろうなぁ、と。 

 

実演聴きたかった・・・

本当はもっといろいろ取り上げたいのです。ベートーヴェンにしてもブラームス(ハレ管とザールブリュッケンとの違いとか)にしても、ブルックナーにしても、VOXレーベルに入れていたラヴェルやバルトーク、ストラヴィンスキーとかも、もっともっと取り上げたい。

ただ、改めて聴き直してみて、この偉大な職人指揮者の実演に触れることができなかったのが、とても残念でした・・・機会はあったはずなのになぁ・・・こうした思いをしないためにも、足を運べる演奏会にはもっと足を運ぶべきなんだろうなぁ、と改めて思いました。

 

それと合わせて、やっぱり年齢を重ねても楽譜に真摯に向き合って新しい発見を繰り返していた(N響と最後の共演となったベートーヴェンの第九ではベーレンライター版使ってましたよ・・・)氏の音楽に対する姿勢に、改めて感動させられるのです。

 

氏のご冥福をお祈りいたします。

 

 

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