JPYCが正式発行──“現金を信じる国”が次に信じるもの

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(※この記事は、10月末に正式発行された「円ペッグ型ステーブルコインJPYC」について、
少し時間を置いて考えてみたものです。)

「ついに来たか…!」という人と、
「いや、まだ早いって…」という人が、はっきり分かれそうなニュースです。

円に連動するステーブルコイン「JPYC(ジェイピー・ワイ・シー)」が正式に発行されました。
いわば、日本円の“デジタル版”…のようでいて、実はちょっと違う。
このあたりがまた、日本らしいというか、慎重というか。


ステーブルコインって、そもそも何?

ステーブルコインとは、値動きが安定している仮想通貨のこと。
JPYCはその名のとおり、1 JPYC = 1円に価値が連動します。
銀行預金などで裏付けされていて、ビットコインのように暴落もしません。

ただしここで一つポイント。
JPYCは「円そのもの」ではなく、法律上は「前払式支払手段」として発行されています。
つまり、日銀が発行する“デジタル円(CBDC)”とは別物。
とはいえ、「円建てでブロックチェーン上を動く民間通貨」が現実になった意義は大きいと思います。


「便利そう」と「怖そう」の境界線

正直、テクノロジー好きとしてはワクワクします。
JPYCは銀行やカード会社を経由せず、ブロックチェーン上で送金できる“日本円”です。
つまり、誰の許可もなく、個人間で直接お金をやりとりできる。

この“自由”が新しいのか、危ういのか。
そこが最大の見どころでしょう。

しかも、JPYCを扱うためのウォレットは「自己主権型(Non-Custodial)」が基本。
銀行口座のパスワードなら再発行できますが、
ウォレットの秘密鍵を失くしたら誰も助けてくれません

……つまり、時代が進んでも「うっかりミスは救えない」というわけです(笑)。

と書いてはみましたが・・・。

正直、ブロックチェーンという技術そのものにはロマンを感じます。
改ざんされない台帳、中央集権を越えた自由な決済。
でもその「自由」って、時に“責任の丸投げ”にも見えるんですよね。

いまの仮想通貨は、まだ“信頼”よりも“投機”の側にいる気がします。
JPYCのような取り組みが、本当に生活の中で信頼される仕組みになるか。
そこは、まだ少し距離を置いて見ていたい、というのが正直なところです。


現金主義ニッポン、どうする?

とはいえ、日本の現金流通率はいまだ4割以上
電子マネーもクレカも広まったとはいえ、
現金を手元に置いておきたい人はまだまだ多いです。

コンビニでATMに並び、
チャージして、QRコードをかざして──
JPYCなら、それらを全部すっ飛ばして送金できる。
それでも「現金がないと不安」という感覚は根強いですよね。

結局ここで問われるのは、技術ではなく信頼と文化なんだと思います。

祖父母世代の“タンス預金”は安心の象徴。
一方で、私たちは“アプリ残高”が減ると不安になる。
どちらも結局、“お金は見えないと怖い”という感覚を引きずっているのかもしれません。


「お金を持たない自由」の先に

JPYCのような円ペッグ型コインが普及すれば、
日本のキャッシュレスはようやく世界標準に追いつくかもしれません。

ただし、「財布が軽くなる自由」と同時に、
「お金の実感を失う不安」もついてくる気がします。

お金って結局、“信じる仕組み”なんですよね。
紙でもデータでも、それを信じる人がいるから成り立っている。

技術がどれだけ進んでも、
最後に問われるのは“私たちはそれを信じられるか”。

そう考えると、JPYCの登場は単なる通貨の話ではなく、
「信頼の再構築」というもっと深いテーマなのかもしれません。


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